再び、光が差す-again-〈下〉
綺月は慎重に言葉を選びながら、俺に真っ直ぐに伝えた。


「それと、海斗の縛られていない自由は、自由では無い気がする」

「…じゃあ、なんなんだよ」


綺月は言いにくそうな顔をしていて、それでも俺が聞き返すから、意を決して伝える。


「ただ放棄しているだけだと思う」


綺月の言葉に、俺は"育児放棄"のことを言っているのだとすぐに単語が降りてきた。


「それを海斗は自由だと言い聞かせている。
その自己暗示に、海斗は縛られている気がする」


綺月にそう言われ、ふと急に腑に落ちた。

自分の親は自分に興味なんて欠片も無かった。

それは言わば、世間からは育児放棄のようなもので、でも俺だけがそれを認めていなかった。

認めたくなかっただけで、それでも本音を言えば俺自身も薄々感じていたことだった。

放任主義な親なんかでは無い、ただ息子の成長に全く興味が無いだけだと。

愛に溺れる母親は、息子に愛を向けてはくれなかった。

自分は自由なんだと羽根を伸ばしているようで、実は愛のない自由に目を逸らして、自由が一番なのだと自己暗示をかけて生きているだけの、ただの弱さ丸出し人間だった。

それが分かると、おのずと全てに答えが出た。

その瞬間、俺は自分でも気付かないほどの静かな涙を流していた。

それは止まることはなく、次から次へと今までの涙が溢れ始める。
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