再び、光が差す-again-〈下〉
─────ッチッチッチ
やけに時計の針が部屋の中に響いて聞こえてくる。
その秒針を聞いていると、段々と心が落ち着いてきて俺は肺まで息を吸うとゆっくりと吐いた。
カオルと綺月の母親が帰ってきた後、自分でも止めることの出来ない涙に動揺と混乱で、逃げるように美月の部屋へと隠れた。
自分が一番動揺しているのは目に見えて分かった。
今まで涙を流したことは無かった、ましてや人前で泣くなんてそんな恥ずかしい姿は絶対に見せない。
だけど、あの時自然と零れた涙は確かに自分の目から零れていた。
「…きもっ」
手の甲に落ちた涙を乱暴に服で拭きながら呟いた。
今すぐに、人の記憶を操作できる特殊な力が欲しい、それか過去に戻れるタイムマシーンが欲しい。
そんな叶わない願望に縋り付きたくなるほど、今の俺は人生で一番の失態をしたと思っていた。
気を紛らわすように、俺は美月の部屋を意味も無くグルグルと歩き回る。
その時、机に乱雑に置かれたパンフレットに目が入る。
そのパンフレットを手に取った瞬間、誰かが部屋のドアをノックする。
そして、ゆっくりと開き、綺月が恐る恐るといった感じで顔を出した。