再び、光が差す-again-〈下〉
「私には、勉強しかないから」


そんなことは無いだろうと、思った。


「昔も、今も、私には勉強しかない」


マイナスな考え方なのかと思ったが、顔を見ればそうではないのだとすぐに分かった。

綺月はむしろ生き生きとしていた。

俺からして見れば、綺月は色んなものを持っていた。

それは全て俺にはないようなものばかりだった。

でも綺月自身は勉強だけが自分の唯一戦える武器なのだと確信していた。

それが俺には無性にかっこよく見えて、羨ましいとさえ思った。

俺には、どんな武器が備わっているのだろうか。

考えるまでもない。多分、何も無い、空っぽだ。


「なんでそんな風に生きられるんだよ。
全部壊したくなるほど苦しくならないのかよ」


会った時からずっと、綺月は何かと戦っていた。

限界になって逃げ出した美月の代わりになって母親の期待に応え続けていたし、その後も家族やAgainと向き合った。

綺月を気付いたらみんなが求めていた。

俺にはそんなものは重すぎる。

自分のことで手一杯で、他人の人生に関与なんて到底出来ない。
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