再び、光が差す-again-〈下〉
「壊したくなるほど苦しくても、そんなことしたって気持ちが晴れるわけではないから」


迷いも悩むわけでもなく、綺月は真っ直ぐにそう答えた。

「そうでしょ?」と問われているような気がして、俺は頷くように瞬きをゆっくりとする。


「海斗」

「…ん?」

「海斗は最初から私の事あまり好きでは無かったでしょ?」


突然図星を突かれ、分かりやすく引き攣る。

その表情に綺月がクスッと笑いながら、それでもと話を続ける。


「私は海斗のこと好きだよ」


その言葉は、耳に入ってくるというよりも、心にスッと入ってきた気がした。

それくらい柔らかくて、優しい言葉だった。


「海斗の嘘をつかないところに、私は信用出来た」


誰かに信用されるのは、結構嬉しかった。
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