再び、光が差す-again-〈下〉
プチパーティーみたいになっていて、雪希の元気すぎる「カンパーイ!」という合図に、みんな互いにグラスを合わせ乾杯をした。

小皿を手にして、バイキングのように各々好きな料理を箸で突っ付き合う。

昔ならありえない光景だった。

なんなら今のこの光景も、夢なのではないかと疑うほどには信じられなかった。

菜穂と奈都が身振り手振りを大きくしながら色んな話をしていて、それを幸人が楽しそうに見ていて、海斗の無茶ぶりに雪希が一人で馬鹿やって、カオルは鼻で笑うような、いつも通りの日常を母はお酒を飲みながらジーッと見ていた。

何を考えて見ているのか私は気になった。

期待と重圧を与えながらも、お金と時間をかけて大切に大切に育てた最愛の姉を、カオル達のような毛嫌いしていた不良に奪われた母は、今何を思ってこの場にいるのか私には理解しようと思っても分かるわけが無かった。

その後、料理が全て皿の上から消えるとプチパーティーはお開きになった。

お皿を洗っている母の横で、その皿を黙々と拭いている私は、今日のことについてどう思ったか聞こうか聞くまいか迷っていた。

ソファーがある場所でみんなが楽しそうに話をしている中、私と母の空間だけはずっと沈黙が続いていて私が上手く切り出せずにいると、母が珍しく沈黙を破った。


「法はいつだって正しいと思っていた私は、法に従えない彼らのことをずっと馬鹿にしていたのかもしれない」


母は皿を洗う手を止めずに、水の音と一緒にそう口にした。

水の音で聞こえるか聞こえないかギリギリの声量だったが、隣にいた私はしっかりと聞こえていた。
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