再び、光が差す-again-〈下〉
「弁護士はいつだって誰だって依頼されれば弁護するのが仕事なのに、人を対等に見れていなかった私は仕事も家族も全部間違っていた」


母は何気なく口にしているつもりでも、洗い終わっている筈の皿をずっと水に当て続けているのに気付き、普通のフリをしているのだと分かった。


「彼らは、良い子達ね。
純粋で素直でずっと楽しそう」

「…そうだね」

「彼らを選んだ美月もあなたも、何一つ間違えていない」


ずっと手にしていた皿を私に渡すと水を止める。

何一つ邪魔な音がない空間で、母の震える声はしっかりと私の耳にも届いた。


「間違ったのは、私だけよ」


お姉ちゃんのようになれない私は出来損ないで、何かが間違っているのだと、必死でお姉ちゃんを真似るように何度も何度も教科書を開いた。

家を出て母を一人にしている私は、親不孝で間違っているのだろう。

だけど、母は間違っていないと口にした。

母は初めて私の選んだ道を肯定して、己の正しさを否定した。
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