再び、光が差す-again-〈下〉
「カオルは多分受験を第一に考えてくれてるんだと思う」

「いやいや、まだ先だよ?
まだ一学期すら終わってないよ?」

「もうすぐ終わるじゃん」

「それでも時間作って会わないと距離が開いちゃうよ!男女の関係って結構些細なことで駄目になるんだから」


誰かと付き合うことが初めての私に、菜穂は心底心配しているのか顔が切実さを物語っていて、手に持っている食べかけのサンドウィッチの具がこぼれ落ちそうなほどの強さで握りながら念を押してくる。

カオルはバイトで忙しいし、私は受験勉強で忙しい。

むしろ最初の頃が異常なくらいだったのかもと思っていたが、もしかしてそうでは無いのかと急に不安になる。

カオルはちまちまとメッセージを送り合うのは好きじゃないから、いつだって電話で済ませようとするが、最近電話さえもかかって来ない。

もしかして、もう私は飽きられているの?

受験生には痛い勉強に支障が出る程の不安要素を菜穂が植え付けてきて、私は動揺で午後の授業はほぼ上の空で集中力を欠いていた。

家に帰ってからも、勉強のやる気が起きずソワソワとリビングと自分の部屋を行き来していた。


「…お前今日落ち着きねぇな」


そんな私を見て、もう自分の家のようにソファーに寝転がってテレビを見ている海斗が落ち着きの無さを指摘する。

集中力を欠いてしまっているのだから仕方ない。

私は冷蔵庫から取り出した水をグラスに移すと、テレビを塞ぐようにして海斗の前に立つ。
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