再び、光が差す-again-〈下〉
「邪魔なんだけど」


当然邪険に扱われるが、私は悪びれも無く、寧ろテレビの音が邪魔で何も言わずにリモコンに手を伸ばすと電源を切る。


「なんだよ!」


何も発さずただただ海斗の視界を邪魔する私に、海斗は苛立ちを全面に見せてくる。

私はグラス一杯の水を、まるで見せびらかすように一気に飲み干すと、仕事終わりに一杯飲んだサラリーマンのように息を吐いた。

そしてその吐いた分の息を勢いよく吸うと、私は饒舌に話し始めた。


「今まで私は勉強に死ぬ思いで時間を費やしきたのは知ってるよね?熱が出ても学年一位を逃しても勉強だけに全力を注いで机に向かってたわけよ。その私が今まさに集中力を欠いているんだけど何でか分かる?」

「……知らねぇよ」

「そう!私にも分からないの!」

「はぁ?」

「カオルと出会って私の人生が一変して、好きになって付き合ってもうお腹いっぱいすぎることが次から次へと起こって目が回る勢いなの。
正直言って、カオルの強引さには手焼くし付いていけない部分もあるけど、それでも別に嫌では無かったのよ。だけど急にそれがピタリと止まると私はものすごーく不安になるの!
一度勉強始めると、眠くなるまでペンを動かしていたような私がこの短時間でもう五回もペンを置いて家を徘徊しているの。怖くない?」


誰かこの止まらない口を押さえてくれと言わんばかりの顔で海斗が引いている。
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