再び、光が差す-again-〈下〉
病院から出ると、母はいつも通りヒールの音を立てながら歩く。

その後ろ姿を見ながら私は足をゆっくり止める。

そんな私に気付いて、母は「何をしているの?」と振り返った。

私はギュッと手を握り、爪が手の平にめり込み痛みが伝わってくる。


「何も出来ない」


そう言葉にした瞬間、ボロボロと涙が次から次へと目から零れる。


「私は何もしてあげられない。
ただ怖くて不安でオロオロしてるだけで、何も出来ない」


お母さんみたいに料理だって上手じゃない、栄養を考えたおかずなんて私には考えられない。

何も出来ない、誰にも何もしてあげられない。

それがもどかしくて、腹立たしくて、情けなかった。
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