再び、光が差す-again-〈下〉
「何を言っているの」


泣きじゃくる綺月を見ながら、母は強く言葉を放つ。


「母親でさえ何も出来ないと嘆いているのに、たかが高校生の綺月がしてあげられることなんてそうそうないのよ」

「…分かってるよ」

「医者でもない限り彼のことは救えないし、家族でもない限り彼女の心身には寄り添えない」


それも分かっている。

お願いだから分かりきっていることをわざわざ口に出さないでと綺月は母を睨む。


「泣いている暇があるのだったら、せっかくなら笑っていなさい」

「…え?」

「弱っている人の側で出来るだけ笑っていなさい」


この状況で笑うなんて、出来ない。
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