再び、光が差す-again-〈下〉
私からしてみれば、杏樹という知らない人物よりも、いつだって優しかった雪希の方が大事だった。

杏樹という人物じゃ無かったら、Againは今頃全員で雪希を襲った人物を捕まえにいくだろう。

でもそうしないのは、まだ杏樹を仲間だと思っているから。

捨てきれない思いがあるのは分かるけど、その思いの度合いは私は知らない。

そんなの知りたいとも思わない。

雪希が目を覚まさない中、不安で眠れなかった人がいることを知っている私は無性に腹が立った。


「見損ないました。
雪希の想いを汲み取るんじゃなくて、杏樹っていう人に肩入れしていることが何より不愉快です」

「杏樹のことちゃんと話したいから、綺月待って…!」


お姉ちゃんが私の腕を掴む。

何を説明すると言うのだろうか。

杏樹との思い入れ話か何かだろうか。

そう考えるだけでまた腹が立って、私はお姉ちゃんの手を乱暴に振り払った。


「ごめんけど、今は聞きたくないかも」


私はそう吐き捨てると逃げるように屋上を後にした。
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