再び、光が差す-again-〈下〉
私の心を写す鏡のように、空が曇を作り雨を降らせる。

ポツポツとただ地面を遊ぶように濡らす雨は、少しずつ感情を表に出すように激しくなる。


「そんな駆け引きするような人だとは思いませんでした」


私は最大限の侮辱で罵り、綺月と同じように屋上から出てすぐの階段で立ち止まった。

残された3人はまだ雨に濡られているのか、屋上の扉が開く気配はない。

綺月と私の言葉は全て3人の的をついていたように、わかりやすく表情が強ばっていた。

正しくないのだと分かっているのに、もし許されるのであれば大事にはしたくないという3人の魂胆が上手く隠れず視界にチラついていた。

聡さんが雨で濡れる前髪をかきあげた時、一喜さんと美月さんは聡さんの額の傷を見て、何かを思い出したような悟ったような顔をした。

私は聡さんのその傷を付けられた時のことはあまり詳しくは知らない。

その頃はカオル達と一緒にいるだけで、まだAgainの溜まり場に出入りするほど深い関係では無かった。

だけど、夜の街を歩いているといやでも、ちらほらとAgainのことは耳に入る。

大抗争を引き起こしたAgainのこと、それに伴い昼夜問わず警察のパトロールする目が厳しくなったこと、大抗争を起こした場所は一時期立ち入り禁止となったこと。

そして、その日からカオル達は自分たちがAgainだと口にはしなくなった。

何かあったのだと見てればわかるが、聞ける雰囲気でもなかった。

もう少し早くにカオル達と出会っていれば、私もその気持ちを共有をできたのかもと軽はずみな感情を抱くこともあった。

大抗争をきっかけにAgainは解散し、カオル達は何かを拭い払うようにケンカする頻度が絶えなくなった。

みんなの首を絞める何かを完全に拭い払うことができないから、Againはまた復活した。

捨てきれない過去の思い出が、一生頭にこびりついて消えないのだろう。

でも、そんなの私たちには知ったことでは無い。

聡さん達の正しいを狂わせる思い出は邪魔だとさえ思ってしまった。

だって、聡さん達が口にした選択は、正しくない判断だと思ったから。

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