再び、光が差す-again-〈下〉
「でも、俺見たんだよ」

「誰を?」

「…杏樹さんを」


"杏樹"という名前に、カオル達は一斉に雪希の顔を見る。


「杏樹さんのいつも付けてる甘い香水の匂いがして後ろ姿もどことなく似てたから追ってみたんだ。
そしたら、気付いたら襲われてた」

「...杏樹がやったのか?」

「それは分からない。
でも鈍器で殴られた時、一瞬誘い込まれたんじゃないかって頭を過った」


雪希の言ったことにカオルは頭を抱えた。


「甘い匂いかよ」

「確かにあれは、杏樹さんの匂いだった。
甘い香水を付けている不良は居なかったし、よく覚えている」

「何で、杏樹が…」


喉を締め付けられているかのように息がしづらくなる。

カオルだけでは無く、幸人も海斗も動揺して言葉が上手く出てこなかった。

杏樹を忘れたことは一度だって無い。

でもいつも思い出さないように気を付けていた。

杏樹を思い出すと、一緒に違う人物も思い出すから。
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