再び、光が差す-again-〈下〉
「ねぇ、カオル」

「…ん?」

「杏樹って、誰?」


なんの前触れも無く、私は単刀直入に聞いた。

カオルの私を抱き締める手が一瞬緩くなる。


「…誰からその名前を聞いた」


カオルが吐いた声がいつもよりもずっと低くて、私はゆっくりとカオルから離れる。


「雪希を襲ったのは、その人なの?」


恐る恐るそう聞くと、カオルの眉がピクリと動く。

その一瞬の動揺だけで、カオル達も杏樹という男が雪希を襲ったことに勘づいていることに気付いた。


「違う」


だが、カオルは強く否定した。
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