再び、光が差す-again-〈下〉
「杏樹のことも俺達は仲間だと思ってる。
雪希もそれは理解してる」

「じゃあどうしてその人が雪希を襲うの?
カオル達が仲間だと思ってても、その人は違うじゃん!
許す許さないは、杏樹って男にまた会えてから考えるべきなんじゃないの!?」

「綺月には分からねぇよ!」


私の荒らげた声よりも、更に強い声でカオルは私を突き放す。

私だって自分の考えが間違っているとは思えない。

そしてカオルも杏樹を"仲間"という枠から切り離して見ようとはしない。

これから先もそうやって許していくの?

私は悔しくて堪らなく、涙が零れる。


「そんなもの分かりたくない。
これから先も一生分かる気がしない」


私の"正しい"とカオルの"正しい"が全然違う。

そんな状態で今言い争っても時間の無駄だ。


「ごめん、暫く連絡して来ないで」

「綺月っ…!」


私はカオルに背を向けると、貰ったビニール傘を差して雨の中を早歩きで進む。

分かっている、出しゃばったことを口にしていることも。

それでも、菜穂や紀子さんの弱った顔を思い出すとどうしようも無く許せなかった。


「いい加減にしろよ、杏樹」


カオルの苛立った声は、私にはもちろん聞こえていなかった。
< 69 / 364 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop