再び、光が差す-again-〈下〉
菜穂の両親は美容師で、何となく菜穂も美容関係に行くのだろうと思ってはいたけど、ここまで勉強も頑張ってきたのだからまた新たに高い壁に挑戦してみて欲しいとも密かに思っていた。

決して美容師が菜穂に合っていないという訳では無いけど、少しだけガッカリしている自分がいた。


「綺月は?やっぱ先生の薦めてきた大学を受験するの?」

「んー、まだ悩み中」

「えっ、珍しい〜
綺月ならある程度の進路決めてると思ってた」


菜穂はストローを口に加え、つまみ食いするかのように慎重に飲んでいく。

ゆっくりとストローを辿って上がってくるオレンジジュースをぼーっと見つめながら、飲むなら早く飲めと心の中で突っ込んだ。

日が落ちはじめてきた時間に私と菜穂は店内を出ると、溜まり場の方へと向かって歩く。

他愛のない話で盛り上がり、笑いながら歩いていると見覚えのあるシルエットが私の視界に入る。

おもむろに足を止めると、そこには普段見たことないような清潔感のある服を着た幸人がお洒落なレストランの前で立っていた。


「綺月?どうしたの?」


立ち止まっている私に気付いた菜穂もまた足を止める。
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