再び、光が差す-again-〈下〉
「…でも、桜さんに別れを告げたことがあるってことはもう恋愛感情はないって事だよね?」

「恋愛感情が無くても、キスやその先も出来るものなの?
優しいからってそこまでする必要は無いじゃん?」


昔のカオルみたいに恋愛感情が無くてもできる人はいる。

でも今それが重要ではない気がした。


「好きになればなるほど、自分がボロボロになっていくのが分かる」


菜穂はずっと期待して、一人で舞い上がって、一気に落とされるを繰り返していた。

その度に、息が出来なくなるほど涙を零してきたのだろう。


「ユキの優しさにつけ込むあの人も嫌いだし、期待を持たせるような優しさを見せてくるユキも嫌い。
彼女がいる男をどんどん好きになって止められない自分も嫌い」


もう出ないと思っていた涙がまた菜穂の頬を濡らす。

私は何も言わずにただ菜穂を強く抱き締めた。

どうして気付かないのだろう。

菜穂の優しさも、強がるところも、好きな気持ちも、どうして幸人は見ないフリをするのだろう。

この日から、菜穂は体調が悪いと三日間も学校を休んだ。
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