再び、光が差す-again-〈下〉
「あれ、幸人だよね?」


私が指さす方向を菜穂はゆっくりと辿っていく。


「一人でいるなんて珍しいね、声掛けようよ」

「いや、やめとこう」


菜穂がスっと視線を逸らす。


「え?なんで?
溜まり場に行くって言ったら幸人も付いて来ると思うけど」

「あれは違うよ、行こう」


菜穂は私の腕を掴むとまた歩き出す。

いつもなら真っ先に声をかけそうな菜穂が、あからさまに避け、まるで逃げるような足取りで幸人から離れようとする。

私は困惑しながらも、菜穂の力に抗おうとはせずに黙って付いて行く。

そんな私達の横を、上品なワンピースを身にまった綺麗な女の人が通り過ぎて行く。

サラサラな髪の毛からほのかに花の良い香りがして、私は自然と彼女に目がいく。

そんな綺麗な彼女は誰かに会いに行くのか急ぎ足だった。
< 9 / 364 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop