再び、光が差す-again-〈下〉
病院までの道のりを他愛のない話をしながら歩いていると、屋根の無いバス停のベンチに座って雨にひたすら打たれている男が目に入る。


「…綺月?」

「菜穂、ちょっと待ってて」


まさかと思い、私はその男に早足で近寄る。

そして、今度は私のほうから男を傘に入れてあげる。

男はゆっくりと顔を上げると、切れ長の目が私を視界に入れる。


「こんなところで座ってると風邪引きますよ」


以前この男に言われた言葉をそっくりそのまま返す。


「何でお前がここにいるんだよ」


男は面倒くさそうな顔をしてそっぽを向く。

私から言わせてみれば、逆に何でここに居るのと聞き返したくなった。

服や髪の濡れ具合を見て、かなりの時間こうしていることが見て分かった。
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