再び、光が差す-again-〈下〉
「傘返したいなって思ってたけどまさか会えるとは思わなかった」

「やるって言っただろ?それにビニール傘だぞ?」


男は菜穂と同じ反応をする。

ビニール傘なんかをわざわざ返す人がいるのかという目で見てくる。


「いいんです、私が返したかったから」


私はビニール傘を広げると、男の代わりに差してあげる。

そして男は傘を私から確かに受け取る。


「あなたに傘を差してくれる人もいつかは現れるって言ったでしょ?」


そう言った張本人が傘を差したら意味無い気がするけど、私はそれでも誇らしげに胸を張って「ほらね?」っていう顔をした。


「綺月ー?何してるのよ早く行くよ!」


なかなか帰って来ない私を心配して、菜穂が駆け寄って来る。

そうだ、菜穂にも傘を貸してくれた人に会えたと彼を紹介しよう。
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