再び、光が差す-again-〈下〉
小走りで駆け寄る菜穂の足が徐々にゆっくりになり、私との距離がまだ空いた状態で足を止めた。


「…菜穂?」


菜穂は驚いたように目を大きく見開く。

男がベンチから立ち上がる。


「綺月、こっちに来て」


菜穂が私に手を伸ばす。

まるで犯罪者を見るように、恐怖と憎悪が入り交じった目で男を見る。


「違うの、この人は傘を貸してくれた…」

「いいから!」


私が説明しようとすると、菜穂は強く言い放つ。


「…もしかして、知ってるのか?」


男は菜穂にそう問う。

私は意味が分からず男の顔を見上げると、男は耳についた青いピアスを何度も触る。

どこかで見たピアスに嫌な予感が走る。
< 97 / 364 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop