プレゼントは君がいい


「疲れてるところ悪いんだけど、ちょっといい?」



一通り食べ終えたところで箸を置くと、恐る恐るそう訊ねてきた。

険しいその表情に、一瞬心が弾む。


どうしたの、と言うとやっと口を開いてくれた。







「仕事辞めませんか」





これまでこの仕事を辞めろと言われたことは一度もない。


確かに世にいうブラック企業で、身も心も粉にしながら働いてきた。

会社への不満は尽きないし、愚痴を言えば止まらない自信もある。それでも必死に努力はしてきた。


……それに。




「考えたことはあるの、何回も。でも辞めたところでさ、転職する気力が今ないの」


「ネックなのはそこ?」


「……そうだね、今の時代なかなか見つからないって言うし。やっぱり職がないと色々不安だし」




そんなに頑張ってどうするの?と大学時代の友達に言われたことがある。


そこで初めて、この会社は何か異常なのだと気付いた時には、もう遅かった。


働きながら転職活動をする余裕なんて無く、この先がわからないまま今の職を捨てる覚悟も無い。


八方塞がりだった。




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