政略結婚から逃げたいのに旦那様から逃げられません
プロローグ
どうしてこんなことになったんだろう。
一人病室のベットで横たわり、白い天井を見上げながら私は思った。
身体中に様々な医療機器に繋がれ、手足を動かすどころか自分で呼吸することもできない。
喉を切開されて呼吸器に繋がれているため話すこともできず、動かせるのは眼球だけ。
それでも耳は聞こえているので隣で話をしている男女の会話は聞こえる。
夫とその愛人が私が死んだ後の生活について楽しそうに話をしている。
私の父は大きな会社の社長だった。
母は早くに亡くなり、一人娘の私が後を継ぐことが決まっていたため、大学卒業と同時に父の部下である十歳年上の人と結婚することが決まっていた。
そのため大学時代も恋人を作らず、夫が初めての人だった。
年が離れているせいもありままごとみたいな夫婦生活だったが、特に不満もなかった。
欲を言えばドラマや漫画みたいな恋にも憧れたが、大恋愛をしても離婚する芸能人のニュースを見ていると、一時の感情で盛り上がっても先はわからないとも思い、だったらこれでもいいかと考えていた。
適度に習い事をし、家事をこなし夫のために手料理をふるまう。時には仕事関係の人を招いてホームパーティー。
夫婦生活は淡白だったけど、他の人を知らない私はこんなものだろうと夫の浮気を疑いもしなかった。
事態が急変したのは父が亡くなってから。
夫はまったく家に帰らなくなり、世間知らずの私は家も貯金も車もすべての財産を夫名義に書き換えられ、無一文になっていた。
そしてある時、一人の女性と男の子を連れて夫が帰って来た。
私と離婚して彼女と結婚する。彼女を愛している。彼女とは君と結婚する前から付き合っていた。この子は自分と彼女の子どもで、すでに認知している。
お前のことは財産だけが目的。好きだったことは一度もない。
夫はそう言った。
私の中で何かが壊れた。
それから何があったのか、気づけばここにいた。
看護師の話からどうやら私は交通事故を起こしたらしい。
酒を飲み車を運転し、工事現場に突っ込んだということだった。
幸い誰も巻き込んでいなかったそうだ。
私の側で夫が泣きながら警察に事情を話している。
どうやら私は父親が亡くなってからアルコール依存症だと言っていて、ご丁寧に医師の診断書まで用意されていた。
お酒なんて家で一度も飲んだことがない。
なのに一度も会ったことない家政婦が夫の話を援護し、単なる事故として処理された。
最後は家族と過ごしたい。そう言って夫は設備を整え私を自宅に引き取った。
外は台風。
強い雨風が吹き付けている。このままだと直撃だ。十分警戒してください。
そう言っているアナウンサーの声が聞こえる。
私の意識はそこで途絶えた。
一人病室のベットで横たわり、白い天井を見上げながら私は思った。
身体中に様々な医療機器に繋がれ、手足を動かすどころか自分で呼吸することもできない。
喉を切開されて呼吸器に繋がれているため話すこともできず、動かせるのは眼球だけ。
それでも耳は聞こえているので隣で話をしている男女の会話は聞こえる。
夫とその愛人が私が死んだ後の生活について楽しそうに話をしている。
私の父は大きな会社の社長だった。
母は早くに亡くなり、一人娘の私が後を継ぐことが決まっていたため、大学卒業と同時に父の部下である十歳年上の人と結婚することが決まっていた。
そのため大学時代も恋人を作らず、夫が初めての人だった。
年が離れているせいもありままごとみたいな夫婦生活だったが、特に不満もなかった。
欲を言えばドラマや漫画みたいな恋にも憧れたが、大恋愛をしても離婚する芸能人のニュースを見ていると、一時の感情で盛り上がっても先はわからないとも思い、だったらこれでもいいかと考えていた。
適度に習い事をし、家事をこなし夫のために手料理をふるまう。時には仕事関係の人を招いてホームパーティー。
夫婦生活は淡白だったけど、他の人を知らない私はこんなものだろうと夫の浮気を疑いもしなかった。
事態が急変したのは父が亡くなってから。
夫はまったく家に帰らなくなり、世間知らずの私は家も貯金も車もすべての財産を夫名義に書き換えられ、無一文になっていた。
そしてある時、一人の女性と男の子を連れて夫が帰って来た。
私と離婚して彼女と結婚する。彼女を愛している。彼女とは君と結婚する前から付き合っていた。この子は自分と彼女の子どもで、すでに認知している。
お前のことは財産だけが目的。好きだったことは一度もない。
夫はそう言った。
私の中で何かが壊れた。
それから何があったのか、気づけばここにいた。
看護師の話からどうやら私は交通事故を起こしたらしい。
酒を飲み車を運転し、工事現場に突っ込んだということだった。
幸い誰も巻き込んでいなかったそうだ。
私の側で夫が泣きながら警察に事情を話している。
どうやら私は父親が亡くなってからアルコール依存症だと言っていて、ご丁寧に医師の診断書まで用意されていた。
お酒なんて家で一度も飲んだことがない。
なのに一度も会ったことない家政婦が夫の話を援護し、単なる事故として処理された。
最後は家族と過ごしたい。そう言って夫は設備を整え私を自宅に引き取った。
外は台風。
強い雨風が吹き付けている。このままだと直撃だ。十分警戒してください。
そう言っているアナウンサーの声が聞こえる。
私の意識はそこで途絶えた。
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