政略結婚から逃げたいのに旦那様から逃げられません
第十章
「それではクリスティアーヌ様、私たちはこれで失礼いたします」
マリアンナとリリアンがお辞儀をして退室し、部屋に一人残された私は改めて部屋を見渡した。
広い寝室に嫌でも目に入るキングサイズの寝台。いや、超キングサイズ?あんな大きさの寝台がこの世にあるのか、特注か、それともここでは普通なのか。
それに……
たった今マリアンナたちに着付けられたばかりの自分の衣服を見下ろす。
編み上げられたレースでできた下着。上下セットになった下着の上は辛うじて胸を覆う程度のチューブトップ。それもレースだから隙間から乳首がはみ出てきそう。下は両側は紐になって髪の毛と同じ色の毛がうっすらと透けている。
その上に羽織っているのも、これまた「隠す」という意味などないような代物で、膝丈までのワンピースで花嫁のヴェールのような薄い生地のもの。背中にリボンが付いていてその紐を引っ張ると、ばっさりと落ちてしまう。
こんなのいつ用意したの?
髪の毛はゆるく纏めて、簪風のピン一本で止められていて、これもそれを抜いたら胸の辺りまである髪が一気に解かれるようになっている。
寝室はうっすらとした灯りに照らされているが、私は窓際の二脚ある椅子のひとつに座り、体育座りで何とか前を隠して座る。
夫婦の寝室には扉が三つあって、中央には廊下と直接繋がる扉。そして左右に対になるようにそれぞれ個人使いの部屋と繋がっている。
浴室はそれぞれの部屋にもあるが、この部屋に付いた浴室もある。想像するに、きっと私が普段使っている浴室より浴槽も大きいんだろうと思う。
引き寄せた裸足の足でグー、パーしたりもじもじしていると、ルイスレーン様の部屋へと続く扉がガチャリと開き彼が入ってきた。
「そこにいたのか」
間接照明しかなく、大きな椅子の背もたれが死角となって、最初私が何処にいるのかわからなかったのか、少し経ってから私の存在に気付いて近づいてきた。
「こんな隅で小さくなって何をしている」
傍らに立ち、丸まっているところを上から声をかけられ、膝を抱えて顔だけを上げたところで息を飲んだ。
まだ少し濡れた洗い髪を後ろに流し、膝下の長さの黒い絹の薄いガウンを羽織っている彼が立っていた。
腰には同じ生地の紐を軽く結んでいるだけで、胸元も広く開いている。
これもこういう時に着るための用意されたものなのだろう。
「………そのガウン……」
「……風呂から上がるとこれだけが用意されていた」
「え!」
それだけ?ってことは下着は?
「それより、そんな端に座っていないで、こちらへおいで」
「え、あの、ルイスレーン……」
膝下に手をいれて、さっと抱き上げられてそのまま寝台へ運び込まれた。
「なるほど……これを隠していたのか」
ゆっくりと寝台に下ろして一瞬見えた私の姿を彼は見逃さなかった。
「わ、私が選んだわけでは…」
急いで起き上がって背中を向けると、寝台が沈み彼が端に腰掛けた。
「わかっている。用意したのはマリアンナ辺りだろう」
思ったより近くで彼の声が聞こえて、すごく近くに身を寄せている。背中を向けているのに、彼がこちらをじっと見ているのがわかる。
「わかった」
背後で彼の声が聞こえて、何がわかったのかと思っていると、シュルリ…背中にある紐が引っ張られる感触があった。
そこではっと気付く。前ばかり気にしていたけど、上に着ているものは背中に紐が付いていたことを。
後ろを向いたから外してくれと言っていると思ったみたいだ。
「違うんです……これは」
身を捻って体を半分動かし振り返ったが、それが間違いだった。
彼がまだ紐を握りしめていたせいで、するすると紐が取れて全開になり、生地の重みで下にストンと落ちた。
マリアンナとリリアンがお辞儀をして退室し、部屋に一人残された私は改めて部屋を見渡した。
広い寝室に嫌でも目に入るキングサイズの寝台。いや、超キングサイズ?あんな大きさの寝台がこの世にあるのか、特注か、それともここでは普通なのか。
それに……
たった今マリアンナたちに着付けられたばかりの自分の衣服を見下ろす。
編み上げられたレースでできた下着。上下セットになった下着の上は辛うじて胸を覆う程度のチューブトップ。それもレースだから隙間から乳首がはみ出てきそう。下は両側は紐になって髪の毛と同じ色の毛がうっすらと透けている。
その上に羽織っているのも、これまた「隠す」という意味などないような代物で、膝丈までのワンピースで花嫁のヴェールのような薄い生地のもの。背中にリボンが付いていてその紐を引っ張ると、ばっさりと落ちてしまう。
こんなのいつ用意したの?
髪の毛はゆるく纏めて、簪風のピン一本で止められていて、これもそれを抜いたら胸の辺りまである髪が一気に解かれるようになっている。
寝室はうっすらとした灯りに照らされているが、私は窓際の二脚ある椅子のひとつに座り、体育座りで何とか前を隠して座る。
夫婦の寝室には扉が三つあって、中央には廊下と直接繋がる扉。そして左右に対になるようにそれぞれ個人使いの部屋と繋がっている。
浴室はそれぞれの部屋にもあるが、この部屋に付いた浴室もある。想像するに、きっと私が普段使っている浴室より浴槽も大きいんだろうと思う。
引き寄せた裸足の足でグー、パーしたりもじもじしていると、ルイスレーン様の部屋へと続く扉がガチャリと開き彼が入ってきた。
「そこにいたのか」
間接照明しかなく、大きな椅子の背もたれが死角となって、最初私が何処にいるのかわからなかったのか、少し経ってから私の存在に気付いて近づいてきた。
「こんな隅で小さくなって何をしている」
傍らに立ち、丸まっているところを上から声をかけられ、膝を抱えて顔だけを上げたところで息を飲んだ。
まだ少し濡れた洗い髪を後ろに流し、膝下の長さの黒い絹の薄いガウンを羽織っている彼が立っていた。
腰には同じ生地の紐を軽く結んでいるだけで、胸元も広く開いている。
これもこういう時に着るための用意されたものなのだろう。
「………そのガウン……」
「……風呂から上がるとこれだけが用意されていた」
「え!」
それだけ?ってことは下着は?
「それより、そんな端に座っていないで、こちらへおいで」
「え、あの、ルイスレーン……」
膝下に手をいれて、さっと抱き上げられてそのまま寝台へ運び込まれた。
「なるほど……これを隠していたのか」
ゆっくりと寝台に下ろして一瞬見えた私の姿を彼は見逃さなかった。
「わ、私が選んだわけでは…」
急いで起き上がって背中を向けると、寝台が沈み彼が端に腰掛けた。
「わかっている。用意したのはマリアンナ辺りだろう」
思ったより近くで彼の声が聞こえて、すごく近くに身を寄せている。背中を向けているのに、彼がこちらをじっと見ているのがわかる。
「わかった」
背後で彼の声が聞こえて、何がわかったのかと思っていると、シュルリ…背中にある紐が引っ張られる感触があった。
そこではっと気付く。前ばかり気にしていたけど、上に着ているものは背中に紐が付いていたことを。
後ろを向いたから外してくれと言っていると思ったみたいだ。
「違うんです……これは」
身を捻って体を半分動かし振り返ったが、それが間違いだった。
彼がまだ紐を握りしめていたせいで、するすると紐が取れて全開になり、生地の重みで下にストンと落ちた。