政略結婚から逃げたいのに旦那様から逃げられません
ルイスレーン様はブルネットの女性が好きかもしれない。
金髪の女性が好きかもしれない。
赤毛の女性が好きかもしれない。
もっと溌剌とした女性が好きかもしれない。
胸はそこそこある方だが、もっと大きい方が好みかもしれない。
もしかしたらぽっちゃりが好きかも知れない。
もっと小柄な女性が好きかもしれない。
とにかく、私とは似ても似つかない女性が好きかもしれない。
私には何の魅力を感じず、家具と同じように家にあった方がいいと言うレベルで妻を求めているかもしれない。
もしくは後継ぎを産むための道具。
以前のクリスティアーヌがルイスレーン様をどう思っていたかわからないが、自分との結婚が国王陛下からの薦めで、彼と歳が十歳離れていると聞いてから、ずっとそんな不安を抱えていた。
まだ見ぬ夫に再び会った時、彼の目には私はどう映るだろう。
記憶のことは、クリスティアーヌとしての記憶を失くしても、如月愛理としての記憶があることで、全く自分というものを失くしたわけではないこともあり、忘れたならもう一度勉強すればいいとすら考えていた。
「クリスティアーヌ様が、ルイスレーン様に歩み寄ろうとせず何もしなければ、確かに何も得るものはないでしょう。それはルイスレーン様も同じです」
「けれど、そうやって努力して、全て無駄だったら?それでも私を受け入れてくれなかったら、その時はどうしたら……」
そう、如月愛理の時は始めから負けていた。
夫は私を札束くらいにしか見ていなかった。
愛する人は始めから決まっていて、私の入る余地などなかった。
夫に気に入られようと完璧な妻と思われようと努力したことは、全て無駄だった。
「クリスティアーヌ様が何を想像して、そのように不安に思われているのかわかりませんが、ルイスレーン様はだからと言って一度妻となった方を簡単に見放す方ではありません」
「そんなの、先生が知っている頃の彼ならそうかも知れませんが、今の彼がそうとは限りません」
「人間の本質というのは、そう簡単には変わらないと思いますが……クリスティアーヌ様にはそう思う何かがあったのですね。何か思い出されましたか」
記憶を失くしている筈の私が何かのトラウマを抱えて苦しんでいるなんて、普通に考えれば記憶が戻ったと思うだろう。
「え、あの……」
「先ほども申しましたように、倒れる前のクリスティアーヌ様を私は存じ上げません。ですから、以前のクリスティアーヌ様がどんな方であったかはダレクたちから聞き及んだことしか知り得ません。それとてクリスティアーヌ様が表に出さなかった考えや思いなど、到底知るよしもありませんが、話していただけませんか?クリスティアーヌ様が何を抱えて苦しんでおられるのか。歳を重ねた分、少しは知恵があるつもりです。お役に立てるかも知れません」
先生はそう言って、今日習うはずだった歴史の本を閉じて私の話を聞く体制をつくった。
どうするべきなのか私は悩んだ。
こんな話をしてすぐに信じてもらえるとは思わない。
でも、一人で抱えたままでぐずぐず言っていても皆も対応に困るだろう。
「今すぐが無理ならお心が決まってから……」
「いえ、お話します。私には協力者が必要なのです。ですが到底信じられなくても、最後まで黙って聞いてください」
「その話、私もお聞かせください!」
突然、マリアンナが部屋に乗り込んできた。
「マリアンナ……」
「申し訳ございません。立ち聞きするつもりはありませんでしたが、協力が必要ならこのマリアンナもお力添えしたく存じます」
「私も」
「え、ダレク」
その後ろから執事もついてきて、私はまた驚いた。
「先生とマリアンナと私。一人より二人、二人より三人です。我々が協力すれば奥様の不安に思われていることの解決策が見つかるかもしれません」
ダレクが胸を張って言い、マリアンナもうんうんと頷いた。
金髪の女性が好きかもしれない。
赤毛の女性が好きかもしれない。
もっと溌剌とした女性が好きかもしれない。
胸はそこそこある方だが、もっと大きい方が好みかもしれない。
もしかしたらぽっちゃりが好きかも知れない。
もっと小柄な女性が好きかもしれない。
とにかく、私とは似ても似つかない女性が好きかもしれない。
私には何の魅力を感じず、家具と同じように家にあった方がいいと言うレベルで妻を求めているかもしれない。
もしくは後継ぎを産むための道具。
以前のクリスティアーヌがルイスレーン様をどう思っていたかわからないが、自分との結婚が国王陛下からの薦めで、彼と歳が十歳離れていると聞いてから、ずっとそんな不安を抱えていた。
まだ見ぬ夫に再び会った時、彼の目には私はどう映るだろう。
記憶のことは、クリスティアーヌとしての記憶を失くしても、如月愛理としての記憶があることで、全く自分というものを失くしたわけではないこともあり、忘れたならもう一度勉強すればいいとすら考えていた。
「クリスティアーヌ様が、ルイスレーン様に歩み寄ろうとせず何もしなければ、確かに何も得るものはないでしょう。それはルイスレーン様も同じです」
「けれど、そうやって努力して、全て無駄だったら?それでも私を受け入れてくれなかったら、その時はどうしたら……」
そう、如月愛理の時は始めから負けていた。
夫は私を札束くらいにしか見ていなかった。
愛する人は始めから決まっていて、私の入る余地などなかった。
夫に気に入られようと完璧な妻と思われようと努力したことは、全て無駄だった。
「クリスティアーヌ様が何を想像して、そのように不安に思われているのかわかりませんが、ルイスレーン様はだからと言って一度妻となった方を簡単に見放す方ではありません」
「そんなの、先生が知っている頃の彼ならそうかも知れませんが、今の彼がそうとは限りません」
「人間の本質というのは、そう簡単には変わらないと思いますが……クリスティアーヌ様にはそう思う何かがあったのですね。何か思い出されましたか」
記憶を失くしている筈の私が何かのトラウマを抱えて苦しんでいるなんて、普通に考えれば記憶が戻ったと思うだろう。
「え、あの……」
「先ほども申しましたように、倒れる前のクリスティアーヌ様を私は存じ上げません。ですから、以前のクリスティアーヌ様がどんな方であったかはダレクたちから聞き及んだことしか知り得ません。それとてクリスティアーヌ様が表に出さなかった考えや思いなど、到底知るよしもありませんが、話していただけませんか?クリスティアーヌ様が何を抱えて苦しんでおられるのか。歳を重ねた分、少しは知恵があるつもりです。お役に立てるかも知れません」
先生はそう言って、今日習うはずだった歴史の本を閉じて私の話を聞く体制をつくった。
どうするべきなのか私は悩んだ。
こんな話をしてすぐに信じてもらえるとは思わない。
でも、一人で抱えたままでぐずぐず言っていても皆も対応に困るだろう。
「今すぐが無理ならお心が決まってから……」
「いえ、お話します。私には協力者が必要なのです。ですが到底信じられなくても、最後まで黙って聞いてください」
「その話、私もお聞かせください!」
突然、マリアンナが部屋に乗り込んできた。
「マリアンナ……」
「申し訳ございません。立ち聞きするつもりはありませんでしたが、協力が必要ならこのマリアンナもお力添えしたく存じます」
「私も」
「え、ダレク」
その後ろから執事もついてきて、私はまた驚いた。
「先生とマリアンナと私。一人より二人、二人より三人です。我々が協力すれば奥様の不安に思われていることの解決策が見つかるかもしれません」
ダレクが胸を張って言い、マリアンナもうんうんと頷いた。