政略結婚から逃げたいのに旦那様から逃げられません
うずくまっていた誰かが立ち上がってこちらを向いた。

ークリスティアーヌ?

ーごめんね。

彼女が呟いた。

ーありがとう。

また彼女が呟いた。

もう一人の私。あの時泣いていたのはクリスティアーヌ?

ーごめんね。アイリ……辛い目に合わせて。今は幸せ?

ーううん…………ありがとう…幸せだよ。クリスティアーヌのおかげ……今度は素敵な人と出会えたよ。

二人で向かい合い、両手を繋ぐ。

ーでも、これはクリスティアーヌの人生……あなたに返さないと………

ーばかね。私たちは二人で一人でしょ。どっちも私、クリスティアーヌでアイリ……ずっと見ていたの、あなたが私のやりたかったことをやってくれてるって。私にはない知識で、私がなりたかった自分になって、頑張ってくれていたのは知っていたよ。

ー本当?私……頑張れていた?

ーうん。ルイスレーンもね、私は怖いだけだった。どう向き合えばいいか、わからなかった。アイリなら何とかできるんじゃないかって……色々なこと知っているし、もう失敗したくないって思ってるの知ってた……

ーそうだね。二度目は……うまく生きられてるかな……あなたがくれたチャンス……活かせてる?

ーもう、以前のアイリとは違うでしょ?

ーでも私一人が頑張ったんじゃないよ。

ーわかってる……でもあなたが何もしなければ、何も変わらなかったよ。

ークリスティアーヌはどうしたいの?これから……

ー私は私……何も変わらない。もう全部思い出したよね。これからは二人分の記憶を持って生きていくんだよ。半分じゃない。二倍……

ーわかってる……クリスティアーヌも、あの時からずっと好きだったんだよね。あの、デビューの日。顔も知らなかったあの人……もう誰だかわかってる?

クリスティアーヌがこくりと頷く。

ーでもね、きっとクリスティアーヌだけでもうまくやれたんじゃないかな。ルイスレーンなら、きっとどんな私でも受け止めてくれたよ。

ーわかってる……私も努力が足らなかった。頑張ることをアイリに教えてもらったよ。

ーこれから二人、一緒に頑張ろう。
ーうん、頑張ろうね。

互いの繋いだ手が輪郭を失くして融け合っていく。きっとどっちかではなく、どっちも私……アイリとクリスティアーヌは二人で一人になる。


顔中にキスの雨が降り、ゆっくりと目を覚ますと目の前にルイスレーンの顔があった。

全身気だるくてまだ足の間に何かが挟まっているような気がして、太ももを擦り合わせる。

「目が覚めた?………どこか辛いところは?」

「大丈夫……少しだるいけど……気分はいいの」

「………そうか……怖く……なかったか?様子を見ながら抱いたつもりだが、最後は無理をさせたかもしれない」

「怖くなんかない……わかってたわ……私が……やめてと言ったらいつでもやめるつもりだったでしょ?」

顔を上げて、嘘ではないことを証明しようと目と目を合わせる。

「気づいていたのか……」

ふっと彼の表情が弛み、自然な笑みが溢れる。

「君が無事で良かった。もしバーレーンに本当に何かされていても、辛いのは君なのだから、受け入れる覚悟はあった。でもやはり心中は穏やかではなかった」

自嘲するルイスレーンが何だかとても可愛く見えて、思わず胸元にキスをした。本当は唇にしたかったが、身長差があって届かなかった。

『可愛い……』

「今のは……どういう意味だ?……」

お腹の辺りに硬いものが触れ、一気に彼のあそこが復活したのがわかった。

仰向けに動かされ、上から彼が覆い被さる。次の準備が出来たことがわかる。

優しく彼の唇が降りてきて、啄むように顔中にキスをされて、最後に深く唇が重なる。

「クリスティアーヌはね……ずっと好きだったんだよ。でも、何をしても嫌われるんじゃないかって……怖くて……自分が嫌われたくなくて、私に委ねたの……」
「………?……どういう意味だ?」
「ずっと……クリスティアーヌは後悔していたの、嫌われたんじゃないかって……」

「私がクリスティアーヌを嫌いだったことなどない。ずっと大切に思ってきた…存外、私は言葉が足らない……きっと不安にさせたのだろうな」

「わかってる……それがあなただって……」

初夜の失敗からクリスティアーヌはずっと謝りたかった。でも経験のない彼女はどうしたらいいかわからず、ずっと思い悩んでいた。もしかしたら、叔父みたいに殴ったりする?そんな不安がなかったわけではない。

「さっきみたいに焦らさないで…」

口づけされながら片方の胸を揉みしだかれると足の間がすぐに濡れてくる。

「心配しなくてもそんなことはしない。早く君の中に埋めたくてうずうずしている」

背中に腕が回し抱き起こすと、腰を掴まれ膝立ちにされる。すでに彼のものはお臍に付くくらいにそそり勃っている。

「ここに腰を下ろして……」
「え、それは………」

この体制はもしかして……そこに腰を下ろしたらすぐに奥まで入ってしまう。

「大丈夫……支えているから、慌てなくていい……そう、ゆっくり……ああ……」

大丈夫なのかと不安に思いつつも、頭を飲み込んだ途端に恍惚とする彼の顔を見ると、そんな心配も消し飛んだ。彼にこんな顔をさせられるのは私だけだと思うと、胸が締め付けられるような切なさが込み上げる。

「全部……入った……」
「すごい………ルイスレーンが……いっぱい……一番奥……当たって……」

お尻を掴まれ少し持ち上げられているのに、彼の形に広げられて奥の方に先が当たっているのがわかる。

「……煽るな……」
「あん……大きくなった……もう、これ以上は……」

中で更に質量が増したのがわかり、顎を突き出して上を向いて喘ぐ。
背中を反らして彼の前にさらけ出した胸を、彼が口に含んで吸い上げる。

「辛いか?」

「だい……大丈夫……気持ち……いい……」

「好きなように動いていいぞ……」

「ひゃっ!」

恐る恐る腰を少し浮かすと、自分が動いたことで微妙なところが擦れてびくりとなった。

「む、無理……へ、変になりそう……」
「変に?」
「だって……先が擦れて……力が入らない……」
「まるで生まれたての小鹿のようだ」

膝立ちになりかけ、そこでプルプルと震えていると、それを見てルイスレーンが目を細める。

「愛しい人……ほら、支えてあげるから、ゆっくりと……そうだ……ああ……」

私が感じているように彼も感じているのがわかり、少しずつ角度を変えながら気持ちのいいところを探す。次第に速度を上げて動かしていくと、やがて絶頂が訪れ、彼が射精すると、背中を抱き寄せられて肩の上に頭を預けた。

彼の汗ばんだ肌に唇が触れる。

「素敵だ……」

まだ中に残したままで彼が言うので、思わず締め付けると、まだ残っていた精液が絞り出された。

彼はまだ余裕があるようだが、私がもう体力の限界に達しているのを察し、私の中から引き抜くといつものように絞ったタオルで体を拭いてくれた。

「ありがとう……」
「それはこちらの台詞だ。疲れたろう?無理をさせたな。今は休みなさい」

彼の温かい体に引き寄せられ、目を閉じると忽ち眠りに落ちた。
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