政略結婚から逃げたいのに旦那様から逃げられません
「リンドバルク卿、久しいな」
アンドレア殿下も声をかけてくれる。
「皇太子殿下もお変わりなく、エレノア様、イヴァンジェリン様も相変わらずお美しい」
「あら、少しは社交辞令というものがわかってきたのかしら」
「女性に美しいと言っておけば誰も文句は言わないでしょう。年配の方にはお若いと言えばいいのですし」
「相変わらず手厳しい。ところで、そちらが噂の?」
アンドレア殿下がルイスレーン様の後ろに控える私に視線を移し、他の三人の視線も集中する。
「お妃様方はお会いしていると思いますが、彼女が私の妻となりましたクリスティアーヌです」
「アンドレアだ。そなたとは遠い親戚になるらしいな」
「オリヴァーだ」
「こんばんは、クリスティアーヌ」
「再会を楽しみにしておりましたわ」
皇太子殿下、オリヴァー殿下、エレノア妃、イヴァンジェリン妃の順で挨拶を受ける。
「クリスティアーヌでございます。以後お見知りおきを……エレノア様、イヴァンジェリン様、その節はお招きいただきありがとうございました」
スカートの横を持って深々とお辞儀をする。
「そう固くならずに……顔を上げなさい」
「は、はい」
アンドレア殿下の許可をもらって顔をあげる。ルイスレーン様が手を伸ばして側に引き寄せてくれた。
「二人が並んだところは初めて見たわ」
「なかなかお似合いの夫婦だ。それに見事な王家の瞳だな」
八つの目が私の目を見つめる。
アンドレア殿下もオリヴァー殿下も陛下と同じような瞳の色をしている。
「畏れ入ります……私のような若輩者がこのような瞳の色を持つなど……」
「望んで得られるものではない。自分の責でもないことに責任を感じる必要はない。見事だと誉めているのだ」
アンドレア殿下は気さくに話しかけてくださる。
「もう疲れは取れたか」
オリヴァー殿下が私の瞳から視線を移し、ルイスレーン様に話しかける。
「はい。お陰様で……殿下はいかがですか?」
「久々の自分の部屋でゆっくり寝ることができた。イヴァンジェリンも私の好物や何やらを用意してくれて、気遣ってくれたのでな」
「まあ、オリヴァー様……」
イヴァンジェリン妃が照れて俯く。
「昨日からこの調子なのだ」
「本当に私たちも呆れるほどに」
アンドレア殿下とエレノア妃も二人の仲の良さに温かい眼差しを向ける。
茶会でもこんな流れで始まった。
これは間違いなくこっちに飛び火してくるのではと身構える。
「お二人が仲むつまじく何よりです。両殿下妃殿下の様子を拝見して臣下としても喜ばしい限りです。これまではそのことに気がつきませんでしたが……」
ルイスレーン様が私の顔を覗き込むように見つめる。
「昨日邸に戻って彼女に『お帰りなさい』と言われ、家で妻がそうやって出迎えてくれることが素晴らしいことだと初めて気がつきました」
「ルイスレーン様………」
蕩けるような眼差しでそう彼は言った。
確かに「お帰りなさい」は言った。
でもまさかあんなひと言をそんな風に思っていたのか。いや、これは四人の前だからそう言っているのかも。
「おや」「あら」「まあ」
「これは、こちらがあてられたかな」
四人が意外な言葉を聞いて驚く。
「オリヴァー殿下にも戦地で色々我々夫婦のことをご心配いただいておりましたが、私なりに今はこれで良かったと思っております。良縁をいただきました国王陛下に感謝しております」
「父上が聞けば喜ぶだろう。私たちも遠い親戚とは言え、親族の彼女には幸せになってもらいたいと思っている。彼女にとっても卿との縁は何よりのものであろう」
アンドレア殿下が私達の様子を見てそうおっしゃった。
「失礼いたします。オリヴァー殿下」
「どうした」
慌てた様子で突然侍従がやって来て殿下声に何やら耳打ちした。
アンドレア殿下も声をかけてくれる。
「皇太子殿下もお変わりなく、エレノア様、イヴァンジェリン様も相変わらずお美しい」
「あら、少しは社交辞令というものがわかってきたのかしら」
「女性に美しいと言っておけば誰も文句は言わないでしょう。年配の方にはお若いと言えばいいのですし」
「相変わらず手厳しい。ところで、そちらが噂の?」
アンドレア殿下がルイスレーン様の後ろに控える私に視線を移し、他の三人の視線も集中する。
「お妃様方はお会いしていると思いますが、彼女が私の妻となりましたクリスティアーヌです」
「アンドレアだ。そなたとは遠い親戚になるらしいな」
「オリヴァーだ」
「こんばんは、クリスティアーヌ」
「再会を楽しみにしておりましたわ」
皇太子殿下、オリヴァー殿下、エレノア妃、イヴァンジェリン妃の順で挨拶を受ける。
「クリスティアーヌでございます。以後お見知りおきを……エレノア様、イヴァンジェリン様、その節はお招きいただきありがとうございました」
スカートの横を持って深々とお辞儀をする。
「そう固くならずに……顔を上げなさい」
「は、はい」
アンドレア殿下の許可をもらって顔をあげる。ルイスレーン様が手を伸ばして側に引き寄せてくれた。
「二人が並んだところは初めて見たわ」
「なかなかお似合いの夫婦だ。それに見事な王家の瞳だな」
八つの目が私の目を見つめる。
アンドレア殿下もオリヴァー殿下も陛下と同じような瞳の色をしている。
「畏れ入ります……私のような若輩者がこのような瞳の色を持つなど……」
「望んで得られるものではない。自分の責でもないことに責任を感じる必要はない。見事だと誉めているのだ」
アンドレア殿下は気さくに話しかけてくださる。
「もう疲れは取れたか」
オリヴァー殿下が私の瞳から視線を移し、ルイスレーン様に話しかける。
「はい。お陰様で……殿下はいかがですか?」
「久々の自分の部屋でゆっくり寝ることができた。イヴァンジェリンも私の好物や何やらを用意してくれて、気遣ってくれたのでな」
「まあ、オリヴァー様……」
イヴァンジェリン妃が照れて俯く。
「昨日からこの調子なのだ」
「本当に私たちも呆れるほどに」
アンドレア殿下とエレノア妃も二人の仲の良さに温かい眼差しを向ける。
茶会でもこんな流れで始まった。
これは間違いなくこっちに飛び火してくるのではと身構える。
「お二人が仲むつまじく何よりです。両殿下妃殿下の様子を拝見して臣下としても喜ばしい限りです。これまではそのことに気がつきませんでしたが……」
ルイスレーン様が私の顔を覗き込むように見つめる。
「昨日邸に戻って彼女に『お帰りなさい』と言われ、家で妻がそうやって出迎えてくれることが素晴らしいことだと初めて気がつきました」
「ルイスレーン様………」
蕩けるような眼差しでそう彼は言った。
確かに「お帰りなさい」は言った。
でもまさかあんなひと言をそんな風に思っていたのか。いや、これは四人の前だからそう言っているのかも。
「おや」「あら」「まあ」
「これは、こちらがあてられたかな」
四人が意外な言葉を聞いて驚く。
「オリヴァー殿下にも戦地で色々我々夫婦のことをご心配いただいておりましたが、私なりに今はこれで良かったと思っております。良縁をいただきました国王陛下に感謝しております」
「父上が聞けば喜ぶだろう。私たちも遠い親戚とは言え、親族の彼女には幸せになってもらいたいと思っている。彼女にとっても卿との縁は何よりのものであろう」
アンドレア殿下が私達の様子を見てそうおっしゃった。
「失礼いたします。オリヴァー殿下」
「どうした」
慌てた様子で突然侍従がやって来て殿下声に何やら耳打ちした。