キミの恋のはじまりは
「うわっきったねー」
「泉のせいじゃん!」
「まだまだ子どもだなー」
「はぁ?どっちが!」
泉を睨みつけて濡れてしまった顎をごしごし拭えば、呆れたように「女子力ないな」の声。
「……っ、うるさい!」
優しいなんて思って損した!
泉に女子力発揮する意味ないもんね!
さっきの彼はかわいいねって言ってくれたよ!
……、
まあ、あれは、お世辞か。
そんなことを思い返していれば、自分の醜態までも脳裏に浮かんできて、やるせない気持ちになる。
……もう全部、泉のせい!
うん、決定!泉がすべて悪い!
「もうどっか行ってよ!」
自分の消化できない胸の中のもやもやを勝手に泉に押し付けて、頬を膨らませぷいっとそっぽを向けば、くくっという小さな笑い声が聞こえた。
初めは口の中に閉じ込めるように控えめだったその声が、だんだんと大きくなり私の耳を震わせる。
少しの間、振り向かないように粘ったけれど、やっぱり負けてしまうのはいつも私の方。