キミの恋のはじまりは
「莉世さぁ……」
包まれたままの手の熱さに心がじんわりとする。
前髪から覗いた濃い茶色の目が私を見つめる。
その姿がまたあの人に重なるから、胸が苦しくなる。
自分でもどうしようもなく、跳ね上がる心拍数に自分で嫌気がさした。
泉が次の言葉を紡ごうと息を吸った瞬間、ポケットでヴィーヴィーと音がした。
液晶画面を見ると「ちょっとごめん」とベンチから立ち上がる。
離れた泉にホッとしてゆっくり息を吐き出した。
『あれ片桐くんじゃない?!』
振り向くと、泉の学校の制服を着た女の子がこちらを見ていた。
『片桐くん見れるなんてラッキー』
『ヤバ。やっぱかっこいい』
『一緒に帰りたい!声かける?』
『えっ!輝きすぎてて、声かけれない!』
密やかだけれど楽しそうな声。
い、泉のことだよね……?
キャッキャしている女子たちを横目に、頭を傾げなら泉を見上げる。
家が隣同士だから部屋の行き来はするけれど、中学から女子校へ進んだ私は、実はそんなに外仕様の泉を見る機会がない。