キミの恋のはじまりは
緑色の液体が飛び出してくるのが、まるでスローモーションのように見えた。

目前までそれが降りかかってきたとき、泉とつながっている手を思いっきり引き寄せて、きつく目を閉じて身を縮こまらせた。


次の瞬間。

頬にあたる水の感触だけがやけに鮮明に走った。

冷たいと感じる間もなく、ぐっしょりと上半身が濡れたのがわかった。



『莉世！』



尖った声にひっぱられるように目を開けて、急いで目の前の泉を確認する。

泉の服には緑色の粒が少し飛んでいたけれど、大したことはなさそうで心底ほっとした。


よかった……。


安堵感がまぶたの裏側に溜まって湿っていくのがわかったから、慌ててつないでいた手を引けば、簡単に離れた。

手のひらのぬくもりが失くなると、緑色の雫が頭の地肌を伝ってこめかみに流れ、頬をなぞっていく冷たさを感じた。

身震いするほど気持ちが悪い感覚に、離れた手の甲でそれを乱暴に拭えば、呆然として立ちすくむ泉と目が合った。

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