キミの恋のはじまりは
この心臓が締め付けられる理由がはっきりとわからなくて、もどかしい。
この気持ちがなんなのか、自信がない。
むぅと泉を見返せば、いたずらな色を含んだ泉がいた。私の頬を掴んでいた手がぎゅっと寄せられれば不細工なアヒル顔にされて、泉がぷっとふき出した。
声を上げて笑う泉に腹が立って、その手を払いのけた。
「やめてよね!」
「あー、変な顔、ウケる」
「なんなの?!ほんと!」
イラついて泉の胸を叩けば、笑いをおさめて
「うそ。かわいくて死にそう」
照れて困ったように言うから、その目を見返すことができなくなって、イラつきが萎んでいく。
「……もう、やめてよ。いろいろ、もう、無理です……」
両手で顔を覆って俯いたけれど、私の髪にくしゃりとする泉の手の感触が心地よくて、のろのろと視線を縫い上げた。