キミの恋のはじまりは
俺の莉世センサーはかなり正確だ。
見えない糸に引っ張られたように必然的に振り向けば、莉世が改札を通り抜けていくところだった。
何か思うよりも先に体は莉世が消えた方へ動き出す。一緒にいたに遠藤と林に「やっぱ先帰るわ」と声だけ残して後と追う。
昨日、俺の部屋に来て散々聞かされたことを思い出せば、早く莉世を見つけたくて気持ちがはやる。
『明日はね、この間、駅で告白してくれた人とデートなの』
『今度こそきっと大丈夫!』
『前の人も手つなぐまでは、がんばれたもん』
手つなぐの、がんばるもんじゃねーし。
つか、俺以外と手とか繋ぐな。
そもそも兄貴忘れるために、ほかの誰かを好きになろうなんて馬鹿すぎるだろう。
俺だったらそのままでいいのに。
兄貴のこと好きなままの莉世でも、むしろ俺のところに来てくれたらそれだけでいいのに。
……もうずっとそう想ってる。