キミの恋のはじまりは
どれぐらい時間が経ったのか、もう感覚がなかった。
泣きすぎて、頭がいたい……。
瞼もうまく開かない。
ベッドに投げ打っていた体をのったりと起こして、暗い部屋の中で頭を軽く振った。
……もう、いない。
自分で決めたことなのに、涙が止まらない。
止まれと願いを込めて手の甲で雑に頬を擦るけれど、終わりのない作業だから無意味だ。
……でも。
誰も見ていないから我慢する必要もない。流れるまま溢れ出るままでもいいのかもしれない。
諦めて、滲む世界でベットの上に膝を抱えて小さく丸まった。
自分の膝を抱えた手の中にはスマホが握られたままで、歪んでいる世界でその冷たさは絶対だった。
暗く光をなくした画面を明るくすることはできなくて、画面を下に見えないようにしてベットに伏せた。
ぎゅっと体を縮こまらせて山折りにした足を抱えて、膝頭に顔をうずめた。
涙をそのままに目を瞑れば、泉の声が耳の奥からよみがえってきて、余計に苦しくる。
『会いたい、莉世』
あんな心が抉られるような声聞いたことなかった。
思い出すだけで、体中が熱を帯びて恋しくなる。
……泉が私の世界からいなくなった。今度こそ、もう戻れない。
それだけが、ぼんやりしている頭の中にちゃんとある事実。