キミの恋のはじまりは
空気さえも重く感じて、思うように吸い込めない。
口を開けて吸おうとするのに、嗚咽だけが漏れてちっとも楽にならない。
どうして、もっと早くちがうふうにできなかったのかな。
私のせいなのに、いつも泉に無理させてばっかりで、罪悪感をおしつけて。
『莉世』
もう名前を呼んでもらえることもない。
「……い、ずみぃ…っ…」
きっともう声に出して呼ぶことはないだろう名前を泣き声とともにこぼす。
「ふぇ…は、ふぅ……」
つらくて、胸が痛くて。
あのまま変わらずにいたくて。
……でも、本当は変わりたくて。
わかんない、なんてことなかったのに。
ずっとずっと欲しいのはひとつだけだった。
誰かが涙を止めてくれても、誰かが優しく頭を撫でてくれても、誰かがほっとする安心をくれても。
ただこわくて。知ってしまうのが。だから、心が傾いた。
でも、わかってた。大事なぬくもりは、決まってた。
―――― いつだって、泉だけだった。