キミの恋のはじまりは
……………………コツン。
微かな音がした。
コツン。カサッ。
どこから聞こえたのかさえ掴めないほどの小さな音。
ガサガサッ。
コンコン。
少しだけはっきりとその音が耳に届いて、なんとなく顔をあげる。
コンコンコン。
さらに、妙な意志を持った強いその音につられる様に視線を巡らせれば、ベランダにつながる窓に縫い付けられる。
月明かりに照らされ、影絵のようにカーテンに映し出されている……
人、影?
その人影がゆらりと揺れて、また窓をノックする音がしてはっと我に返った。
えっ、なななにっっ?!
どどどど、どろぼう?! ふふふふ不審者?!?!
恐怖で涙が止まって、本当に息も止まりそうだ。体も竦んで動かない。
そんな息も絶え絶えの私に容赦なく追い打ちをかける、しつこい音が部屋を支配する。
コンコン、コンコン、コンコン………。
こここっこわいっ!!むりむりむり~っっ!!
さっきまでとは明らかに別物の涙が浮かんできた。
だ、誰か、おおおお、お母さん、呼ばなくちゃ ――――。
震える体でなんとかベットから降りて、四つん這いで部屋を出ようとしたその時、声が聞こえた。
「……莉世、開けて」