キミの恋のはじまりは
その声にビクッと体が跳ねた。
ゆっくりと窓のほうを振り返り、その人影に目を凝らす。
「莉世、お願い。開けて」
よく知ってる私を呼ぶ声。間違えるはずがない。
頭よりも早く体が反応して、転げるように窓辺によってにカーテンを開けると、脳裏に浮かんが彼が立っていた。
白い息を吐きながら、月光の青白さを背負って、ガラス越しの私を見つめて目を細める泉がいる。
あまりのことに驚いて、さっきのことなんて忘れて思わず叫んでしまった。
「な、な、なんで?!」
急いで窓の鍵を開けると、冷たい空気をまとった泉が部屋の中にするりと入り込んできた。
………………ちょっとまって。
いくら隣家って言っても、私の部屋は泉の家側じゃない方にあるから、ベランダから来るとか普通できない。
家の間も、それなりに離れているから……下手したら落ちて大怪我いや死んじゃうよ?!
私の動揺をよそに、泉はしれっとした様子で「マジ、寒すぎ……」なんて言って、小さくくしゃみをした。
「な、なにしてんの?!ベランダってどうやって?!」
「ああ、ちょっといろいろ飛んで?」
「えっ?飛んで?!はっ?!落ちたら死ぬよ?!それにその薄着なに?!風邪引きたいの?!バカなの?!」
部屋着のスエットに素足という寒々しい格好の泉に、ベッドから毛布を引っ張ってきて頭から被せた。
少し触れた髪があまりに冷たくて、私の体温まで一気に奪われたように凍えそうになる。