キミの恋のはじまりは
いつもしていたように笑わなくちゃ。
でも、泉の腕の中があたたかくて気持ちがうまく結べない。
口角をきゅっと上げたつもりだけれど、きっと上手に出来てない。
だって、視界がぼやけちゃってよく見えないもん。
泉に見られたくないのに、逃げ出すこともできないのは……。
視界がどんどん滲んできて、堪えきれず一粒滑り涙が滑り落ちた。
もう瞼の裏に閉じ込めることはできなくて、頬につぎつぎ流れていく。
手で顔を隠そうとしたら、それより早く私の頬に泉の指先が触れた。
涙を拭ってくれるそれがあまりに優しくて、少しだけ視線をあげると深く包み込むような泉の瞳があった。
「隠さないで。莉世はそのままでいい。そのままの莉世が俺の大事な人だから」
きゅうっと心臓がなった。
痛いのに、苦しいのに、甘く切ない疼き。
心が解けて、目眩がした。
「泣いてる莉世を誰かになんて、もう任せたくない。俺がそばで慰めたいし、抱きしめたいし、莉世の不安な気持ち受け止めたい」
「……い、ずみ……」
「大丈夫だから、本当のことを教えて?」
じっとその瞳に見つめられれば、取り繕うことはもうできなくて。
………全部、見せてもいいの?
………私、すごいズルいんだよ?
心の奥にある誰にも言えなかった想いに手を伸ばした。