キミの恋のはじまりは
「……泉は、優しいから…、勘違い、してる……」
泉は意味が飲み込めないというように、少しだけ眉を寄せて首をかしげた。
「小学校の時、私のこと…、っ責任感じて…っ、泉のせいじゃない、のにぃっ…」
伝えなきゃ。ちゃんと。
いままで逃げてきた分、そばにいてくれた分、これで最後だとしても。
震えながら大きく息する私に「ゆっくりでいいよ」と泉の大きな手が背中を撫でてくれる。
「ひどいこと…したっのは…、っわ、たしなのに…、ほんとにひとりになるのがこわくて…っ」
「うん」
「い、泉がいなくなるのが嫌で、優しいから……、ずっと、甘えて…」
「うん」
「泉の好きは、きっと違う。優しいから…責任から……そう思っちゃってるんだよ……」
間近にある泉の顔をすがるように見上げると、泉は瞬きをぱちぱちと真顔でしたあと、ため息を含んだ呆れたような笑いをこぼした。
「……俺、全然、優しくないけど?」
「そんなことない…、私、ズルいから、泉のこと離したくなくてっ」
首を横に振りながら俯いたくと、泉の両手がふわっと頬を包み掬い上げられた。
そこには、真っ直ぐに私だけを映す濃茶の瞳があって。
潤んだ視界でそれだけがクリアに見えれば、ぽろぽろ剥がれていく気持ちに抵抗なんてもうできない。