キミの恋のはじまりは
「……泉が、いい」


気持ちと同時に言葉が溢れた。

吐息が触れ合うほど間近にある泉が瞳が、窓から差し込んだ月明かりを受けて大きく揺れている。


いつも変わらない私に注いでくれる優しい眼差し。

何度でも繰り返される色褪せない記憶。

頬を包む手のひらから伝わる心を緩めてくれる泉の体温。



「……泉じゃなきゃ、やだよぉ…」



瞬きをすると涙がまた落ちていく。

潤んだ視界にはもう泉しか見えない。

頬を包んでいた泉の手が背中に滑り落ちて、そのまま腕の中に抱きしめられた。

ぴったりとひとつになったそのぬくもりを逃したくなくて、ゆっくりと泉の背中に手を回した。



「泉が……好き」



大切な想いを零せば、泉の肩がぴくりと揺れた。

泉は、はぁっと短く熱い呼吸を逃して、さらに強く私をその胸に閉じ込めた。


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