キミの恋のはじまりは
今日は泉の誕生日。
ふたりで出かける予定だったけれど、泉はベッドの中。
今朝、急に熱が出たらしい。
「でも、よかったじゃん」
デスクチェアから立ち上がった潤くんが、私の頭をくしゃっと撫でた。
「莉世、来てくれたし。ねぇ、カノジョちゃん」
……カノジョちゃん?
聞きなれない言葉に首をかしげる。
その仕草を見た潤くんはぷっと吹き出し「泉、まだ前途多難だぁ」と言いながら部屋を出て行った。
泉を見れば、布団から出ている目に明らかに悲しそうな色をのせている。
それを見れば、カノジョちゃん=私だったことが急激にめぐり始めて、顔が熱くなる。
「や、ちがうの!あの、まだ、慣れてなくて!ピンと来なかったっていうか……」
えーっと、えーっと、と言葉を探す私を見ていた泉がふっと目元を緩めた。
「……これからいやってほど実感してもらうし」
「え、なに?」
「なんでもない。……今日、来てくれて、ありがと」
私の方へ体を向けて、ベッドに溢れていた私の毛先をすくって指を絡める。
そんな泉に一瞬にして心を占められてしまう。
息苦しいほどの気持ちを感じれば、もうただの幼なじみじゃないんだなって本当は痛いほどわかってる。