キミの恋のはじまりは
「熱、つらい?」
違う話をしようと、泉の額に手のひらを当てたのに、あっけなくすぐに捕まってしまう。
どきどきしてること隠したかったのに、墓穴を掘ってしまった。
熱を持った泉の手が私の手をきゅっと握って、自分の頬に当てる。
きゅっと心臓が鳴るのと同時に体にも力が入って、肩がぴくりと揺れてしまう。
「莉世の手、冷たくて気持ちいい……」
「え、あ、ああ、それはよかったね……」
「うん、よかった」
泉は目を閉じて顔を少し動かして、私の手にそっと唇を寄せた。
「あ、あのっ、泉?!」
名前を呼べば長いまつげを上げて、私を見上げる。
その濃茶の瞳が熱で潤んでいるからか、感じたことのない色気を含んでいて息をのんだ。
しかも、唇は手に触れたままで「どしたぁ?なに?」とか動かすから、その柔らかい感触が……。
固まって動けなくなってしまった私に追い打ちを掛けるように、泉は私の小指をはむっとその唇で挟み込んだ。
「~っっっ!!!!!」
もうなにがなんだかわからないうちに心臓が走り回ってショート寸前だ。
「ただの幼なじみには、こんなことしないよ?」
泉は私の小指をはむってしていた唇を引き上げて、余裕たっぷりな口調で笑う。
さらに、ぺろっと舐めたりするから、小指が熱くて神経が全部そこに集中する。
くらくらして、かぁっと顔があつくなって、涙もじわりと浮かんでくる。
声も出ずこくこくと必死に頷く私に、泉が満足気にゆるりと目を細めた。
「~っ、も、もうっ。熱あるくせに!ちゃんと寝なよねっ!!」
掴まれていた手を無理やり引き抜いて、ベッドから離れて顔を覆ってうずくまる。
指の間から泉をチラ見すれば、なんとも嬉しそうな顔して私を見ている。
くぅー!!なんなのぉぉぉ!!!
こっちは心臓が壊れるんじゃないかってぐらいなのに!!!
「ごめんごめん。こっちきて?」
全然反省してないだろう「ごめん」なのに、呼ばれれば拒めないけど……反抗はしてみたくなる。