キミの恋のはじまりは
extra edition 1 冬の帰り道
本当にこの人なんなんだ?
お昼休み。教室でやきそばパンを食べていると、へらへらと現れたその人に大きくため息をついた。
「か・た・ぎ・りー」
「……なんすか」
「いつも冷たいね。でもそれがキミのいいところ」
……はーうざ。語尾にわざとらしいハート見えそうですけど。
「葉山先輩、めげないっすね。片桐のこんな冷たい目に晒されて耐えられるの尊敬です」
俺と葉山さんの間に挟まった遠藤が苦笑いしている。
「……で、なんか用っすか?」
マジで煩わしい人だけど、一応、莉世の「お茶友」なので無下にもできない。
……いや、本音はさ。
なに「お茶友」って。すげぇ、いらないこの人。
いつも高木さんが一緒だとはいえ、俺のいないところで一緒にお茶してるとか普通に腹立つ。
他人に対してわかりやすく壁を作る莉世が、この人にはわかりやすすぎるぐらい壁を薄くしてることも、気に入らない。
けど、そういうの、言えないじゃん……。
相変わらず、俺、ヘタレのまま。
「今日さ、莉世ちゃんと真由ちゃんといつものアイス屋に集合なん……」
「あー聞いてます」
思わず、食い気味に言ってしまった。
ちゃんと今朝、莉世から聞いた。
「アイス屋さんの新作が出たから行ってくるね」って目をきらきらさせてた。
「まぁまぁ、そういう彼氏アピールいらんわ。で、こっからが本題ね」
そう簡単にいなされると、葉山さんは口元をだらしなく緩ませて楽しむような笑みを浮かべた。
「アイス屋じゃなくて、俺んちに行くことになったから」
「…………………………はっ?」
「湖太郎がさ、ふたりにプラレール見せたがっててさ。今日は親が早く帰ってくるから。どうせならうちに遊びに来てもらおうかと思って」
俺の様子をうかがうように、にんまりと笑っている。