キミの恋のはじまりは
莉世はぎゅっと俺の胸に頬を寄せて、あたたかい吐息を吐き出した。
「大事な友達がいて……」
莉世は俺の背中に回している手に力を込めながら、何かを自分の中に取り込むかのように息を大きく吸い込んだ。
「……ぎゅってしてくれる、大好きな泉がいる」
蕩けるように甘い言葉。
ぴったりと触れ合うあたたかさが熱を呼んでくる。
―――― だったら、俺は、俺史上、最弱じゃん。
近づいたら、失うのが怖くなった。
手にしてしまうと、どんどん欲張りになる。
視線を落とせば、腕の中にはなんのためらいもなく頬を寄せ、すべてを預けてくれる莉世がいる。
いままで知らなかったこんな莉世の顔。
幼なじみじゃない、恋人の莉世。
俺だけの莉世がいる。
―――― そう思えば、最弱も悪くない。
「莉世、大好きだよ」
頭頂部にそっとキスをした、冬の帰り道。
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「莉世、もう帰らないと…」
「ん…」
「誰か通るかも…」
「ん…」
「莉世?」
「もう少しだけ……ぎゅってしてちゃだめ?」
「~っっ!!!」
(ぎゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっ)