キミの恋のはじまりは
莉世の手をもう一度掴んで、急いで一緒に電車に乗り込む。
学校が違うから普段外で会うことなんて滅多にないのに、今日はせっかく莉世を見つけられてんだ。
このまま、誰かのところなんかに行かせたくない。
だから、焦ってたんだ……。
電車が動き出してから、自分が言わなくてもいい事を口にしていたことに気がついた。
気まずそうな俺のために、莉世はふわっと笑ってくれる。
初めて会った時のように、俺の気持ちを汲み取って無理してくれるんだ。
「泉が謝ることじゃないでしょ。むしろ私がごめんだよ」
流れる景色をみる明るい茶色の瞳が、だんだんと色をなくしていく。
ちがう、ちがうよ。
莉世は悪くない。
ただ一途に兄貴を想っているだけ。