キミの恋のはじまりは


ぐっと力を込めた手を引くことができずにいれば、後ろから泉の心配そうな声がした。



「……うちで心の準備してく?」



隣にある自分の家を顎で指す。


さっきは早く帰らなきゃだろ、とか言ってたくせに。


用意された逃げ場所に一瞬心が揺れる。

でも、そんなの無意味だとわかる。それに、あんまり泉を巻き込んでも悪いしな……。


私は首を振って、自分に気合いを入れるために笑顔をつくった。



「ううん、平気。じゃーね!」



そのまま勢いをつけてドアを引くと



「莉世ちゃーーーーーん!!!!」



熱烈な大声とともに、ものすごい衝撃がきて体が後ろによろけた。

< 30 / 277 >

この作品をシェア

pagetop