キミの恋のはじまりは
ぐっと力を込めた手を引くことができずにいれば、後ろから泉の心配そうな声がした。
「……うちで心の準備してく?」
隣にある自分の家を顎で指す。
さっきは早く帰らなきゃだろ、とか言ってたくせに。
用意された逃げ場所に一瞬心が揺れる。
でも、そんなの無意味だとわかる。それに、あんまり泉を巻き込んでも悪いしな……。
私は首を振って、自分に気合いを入れるために笑顔をつくった。
「ううん、平気。じゃーね!」
そのまま勢いをつけてドアを引くと
「莉世ちゃーーーーーん!!!!」
熱烈な大声とともに、ものすごい衝撃がきて体が後ろによろけた。