キミの恋のはじまりは
夏休みに入って2週間ほど過ぎた8月上旬。
私はクーラーの効いた泉の部屋で、大げさに胸を張って宣誓をしている。
泉の冷たい視線に耐えながら、なんとか口元に笑みを乗せて虚勢を張ってみた。
けれど。
そんなハリボテの笑みはあっという間に威力をなくし自分のこの数ヶ月の愚行が恥ずかしくて、膝を抱えて小さくなる。
「……無理に好きな人をつくるのって上手くいかないって気づいたから」
「……ほーんと、ばかだな」
「うるさいっ!」
泉は心底呆れたように鼻で笑うので、つい言い返してしまうけれど、泉が正しいのはわかっている。
だから、悔しいけれど認めることにする。
「……まぁ、でも。ほんとばかだったと思う」
「あれ、素直じゃん」
「……一応、反省しているので……」
「いい心がけ」
唇の端をくいっと上げて勝ち誇ったように笑ってから、くるりと私に背を向けて机の方へ向いてしまった。
うわぁ、なんかムカつく。……まぁ言い返せないんですけど。
だって本当にばかだし。
好きでもない相手に手を繋がれ、鳥肌立ててた自分を思い出して凹む……。
苦し紛れに、泉の背中を睨んでみるけれど、もちろんまったく気づかれない。