キミの恋のはじまりは
「……さっきのあれって、兄貴のこと、まだ好きってこと?」
耳のすぐ近くで、泉の声がする。
離れた泉の手が戻ってきて、私の頭をゆっくりと何度も撫でる。冷たい指先が、時折、毛先を掬う。
……似ているけど、ほんとは全然違う。気がついていた。
潤くんよりも少しだけ低い声。少しだけ短い髪。少しだけ……淡い瞳の色。
少しだけが積もって、泉は泉だ。
「……そう、かもしれない」
違う、かもしれない。答え方がわからない。
お姉ちゃんに会って、私の中にあったゴツゴツした岩みたいな感情はずいぶん丸くなったように思う。
じゃあ、潤くんへの気持ちは?
なくなるとか、もう気にならないとか、そういうものでもない。
自分でもよく掴めないから、答えようがない。