キミの恋のはじまりは



意識しないにもほどがある。

……いや、それでいいんだけど。そうじゃないとそばにいられないんだけど。


でもさ。一応、俺、男だけど?


あー、違う。

莉世にとって幼馴染は男じゃない。


あー、それも、違う。

兄貴も幼馴染のはずだけど、男だ。


幼馴染じゃなくて、俺ね。俺は男じゃない。


俺の気持ちなんて、莉世は絶対わかってないと思う。

……いや、それでいいんだけど。わかってないからそばにいられるんだけど。


こっちは手に降ってきた髪の感触とか。

近づいた時に濃くなった甘い香りとか。

細くて白い首筋とか。

間近で感じるすべてに心臓が掴まれて、苦しくなって、息が詰まりそうだ。


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