キミの恋のはじまりは


……池に落としちゃった……は変だよね。

学校にも通学路もに、池ないし。

靴を履いていなくても大人に怪しまれない上手な理由を、小学3年の私が考えつくはずもない。



でも、靴の前に……。


足先に落としていた視線を少しだけ上げて、自分の胸元に移してぎゅっと唇を噛んだ。


体操着を来てる理由、なるべく明るく言わなくちゃなぁ……。


何度も同じ言葉を心の中で繰り返す。



『図工で絵の具やってたんだけど、片付けの時、友達にぶつかっちゃってね。それでばしゃーってかかっちゃって』



嘘は、言ってない。

先生にも同じ説明をしたから、もし学校から家に連絡があっても、話が食い違う心配はないはずだ。


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