キミの恋のはじまりは
帰りたくないなぁ……。
どういいわけしようかなぁ……。
一歩家に近づくほどに、足が重くなってうまく歩けない。俯きながら小さく小さく歩く。
けれど、とうとう足が前に出てくれなくなってしまった。
どうしよう、お母さんに知られたら。
知られたくないのに。
足に力を入れようとするけれど、それはもう私の体ではないような感覚で言うことを聞いてくれない。
足だけじゃない。体も心も、自分のものじゃないみたいにどこか遠くにあるように感じる。
背中のランドセルだけがやけに重くて、それが苦しさを連れてくる。
……もう、なんか、全部、嫌だ。
そう思った時。
「莉世?」
名前を呼ばれて、全身がびくりと震え跳ねた。